徽章羽根社会保険労務士事務所

     HANE The Labor & Social Security Attorney's
青空

この記事は、2022-07-08に更新されたものです。

あっせん・調停

1. 「あっせん・調停」とは、

各都道府県にある「労働局」や、「労働委員会」、「社労士会」などで、
「個別労働紛争」(※)を「和解」によって解決するための「場」です。弁護士や大学教授などがお互いの言い分を交互に聞いて、解決策を提案したりしてくれます。

※ 個別労働紛争とは、事業主(会社など)と個々の労働者との間の「労働関係」から生まれる「賃金・労働時間などの労働条件・解雇・セクハラ」などのトラブルです。

ただし、「募集・採用」、「船員・公務員」に関するものは対象外です。

「調停」は、1年以内のセクハラ・育休解雇等、一定の場合(厚生労働省)に、労働局でおこなわれるものです。

調停は、複数の調停委員が調停案を作ってその受け入れを勧告するもの」ですが、
あっせんの場合でも複数のあっせん委員がいたり、「あっせん案」が出されることもあり、調停においても、「調停案」が出される前に解決することもあり、あっせんと調停の間に大きな違いはありません

なお、「労働委員会」では、「(労働組合と企業との間の)労働争議」の解決のための「あっせん・調停・仲裁」もおこないますが、「集団紛争」なので「個別労働紛争」とは区別し、ここでは扱いません。

2. 「和解」とは、

いわゆる「示談」のように、話し合いで争いを解決することです。通常、「和解契約書」のような文書を作成します。

解決に至るために、当事者がお互いにゆずり合ったり、あるいは一方が全面的に折れることもあります。

裁判のようにお互いの請求内容にしばられることなく、当事者が合意して自由な解決方法をとることができます。

3. 【特定】 社会保険労務士とは、

「個別労働紛争」の「あっせん・調停」で、依頼人の代わりに主張や和解の交渉をおこなうことを法律で許されている専門家です。裁判でいう弁護士にあたります。

4. 専門家に依頼するメリット

一般の方は法律や裁判例の知識が少ないため、「○○だった・そんなはずない」、「○○したい・したくない」、「状況が変わった・変わってない」などといった、お互いの思い込みや感情・個人的な立場や見解などにもとづいた主張になりがちです。そうした議論はお互い平行線のまま堂々めぐりとなり、時間や労力がムダになり、不満が蓄積し、感情的な対立を深めてしまうでしょう。

【特定】社会保険労務士や弁護士といった専門家は、まず、雇用契約(労働契約)の内容を確認します。そしてそれに対して民法の契約法・労働法といった法令や裁判例による修正がないかチェックします。そうして理解された雇用契約(労働契約)の全体が、紛争に対してどう適用されるか考え、裁判になった場合の結論を予想します。

説得力があれば、その分、相手方はより冷静にきくことができるでしょう。和解に必要な冷静に話し合う気運も生まれます。また、専門家がおこなう法律の話は、法律をよく知らない一般の方にとっては、質問はできても反論の余地はほとんどなく、少なくともその場では、だまって聞くくらいしかできないものです。

相手方の専門家が信用できない場合は、対抗上、少なくとも同等の専門家に相談するのがよいでしょう。専門家は、守秘義務があるので、依頼人に都合の悪いことは相手方には言わないものです。

【特定】社会保険労務士や弁護士といった専門家は、労働法令・裁判例に精通しており、どのような場合にどの条文・裁判例が適用されてその結果どのような効果がもたらされるか想像できるので、例えば労働法令違反が推定されるときに、裁判の結果もさることながら、公開が原則の裁判において、その結果どういった刑罰や効果が生まれるかを念頭に、あるいはそれらを判断材料に、交渉を進めることができます。つまり、「裁判になると・・・だから、今○○○しておきましょう。(しておくべきと考えます。)」などのアドバイスを行ったり、相手方に促したりできるということです。一般の方ではわかりにくい法律や裁判例についての知識が交渉の行方を左右します。

【特定】社会保険労務士や弁護士は、専門家ならではの深い知識で一般の方が気づきにくい点に気づくことができ、「あっせん・調停」委員に対しても、そのような主張で依頼人をサポートすることができます。【特定】社会保険労務士や弁護士といった専門家が少なくとも一方の側で関与した場合、全く関与しない場合に比べて、「あっせん・調停」による解決率は2倍ほどに増えるそうです。

社会保険労務士は労働法に加えて、公的社会保険(厚生・国民年金、労災・雇用・健康・介護保険等)に関する唯一の国家資格でもあり、年金の加入期間や労災・雇用・健康保険の保険料や給付なども計算に入れて交渉をおこなうことができます。

5. 「労働紛争」の特徴

① 労働紛争は、労働者側も使用者側も決定的な証拠が少ないため、裁判になると、お互いの主張の立証のために大きな労力と長い期間、それに伴ってたくさんの費用が費やされます。

労力 : 証拠・証人さがし、再現ビデオ・書類の作成、など

期間 : 労働事件の第一審の平均審理期間は平均15.9か月(令和2年)。控訴・上告によってさらに長引きます。

費用 : 証人の日当、弁護士の日当・交通費などの実費、書類作成料、弁護士報酬、裁判費用など

② 裁判による判決で相手に強制すると、今後の仕事を続ける上で重要なお互いの良好な関係を壊してしまうかもしれません。

③ 労働紛争は、金額の調整その他の条件交渉によって妥協点が見いだせることも多く、和解向きといえます。

6. 和解の「メリット」

労働裁判の第1審の審理期間は平均15.9か月(令和2年)で、控訴・上告によってさらに長引き、その間の労力・時間・費用は膨大で、また、敗訴すると裁判費用・相手方の弁護士費用、解雇期間中の賃金や遅延利息なども支払わされ、さらに大きなダメージを受けます。早期に和解すれば、それらを大きく減らせます。

② 金額が高額でも、分割払いや金利(判決の場合には最低でも年5%)を免除・調整するなど、柔軟な解決が期待できます。

③ お互いの責任を判定しないので、体面を保ったり、たがいの良好な関係を維持する効果が期待できます。

④ 裁判では、お互いの主張にもとづいた判決になるため、もはや現実的に不可能であろうと思われるような判決になる可能性もありますが、和解では現実的な解決を探ることができます。例えば、お互いの信頼関係が完全に破壊され、もはや復職は現実的ではないと考えられるような場合でも「解雇無効」の主張が通ればその通りの判決が出ますが、和解では「解雇を容認する代わりに解決金○○円」のような金銭解決の道も存在します。

7. 和解の「デメリット」

① 和解の成立にはお互いの合意が必要なので、100%満足な解決にはならないことがあります。

② 責任をあいまいにしたまま解決金を支払うような場合には、出費の理由を株主やオーナーに納得させるのが難しいことがあるかもしれません。

8. 「和解に向いている」事件

① 「解雇無効(職場復帰)」を主張するには、良好な労使関係が復帰後に必要になることから、裁判より和解の方が向いているといえそうです。

② 「雇用関係が継続中」(籍を置いたままの状態)のときも、良好な労使関係が後々必要なので、裁判より和解の方が向いているといえそうです。

③ セクハラ・パワハラなどでは、裁判の主張・立証の過程で二次的被害を受ける恐れがあることから、こちらも和解の方がいいかもしれません。しかし、使用者責任を問うのが難しいときや刑事告発してもしなくてもいいときなどは、交渉を有利にすすめるために弁護士に相談するのがいい場合があるかもしれません。

9. 「和解を目指す」おもな手続き


労働局の
あっせん
【特定】 社会保険労務士や弁護士に代理を頼めます。手続費用は無料、原則として、申立てから約40日後の第1回期日での和解を目指します。
労働局の
調停
一定の場合に「あっせん」に代わっておこなわれます。【特定】 社会保険労務士や弁護士に代理を頼めます。手続費用は無料、必要に応じて何度も期日を設けることがあります。
労働委員会の
あっせん
【特定】 社会保険労務士や弁護士に代理を頼めます。手続費用は無料、必要に応じて何度も期日を設けることがあります。東京・兵庫・福岡を除く44道府県でおこなわれています。
社労士会の
あっせん
【特定】 社会保険労務士や弁護士に代理を頼めます。手続費用は原則有料で、必要に応じて何度も期日を設けることがあります。平日夜間や土曜日に期日が開かれることもあります。
労働審判 弁護士に代理を頼めます。手続費用は有料で、裁判の約半額、平均審理期間は、申立てから約2か月半です。裁判同様の証拠調べがおこなわれることがあります。
裁判上の和解 裁判中に和解を試みます。弁護士に代理を頼めます。
裁判外の和解 いわゆる「示談」です。弁護士に代理を頼めます。「あっせん・調停」の手続き中は【特定】社会保険労務士も和解を目指します。

10. 「話合いが期待できない」場合の選択肢

① 「参加のメリット・不参加のデメリットを伝える」

「あっせん・調停」は、労働審判や裁判のように証拠調べをしないので、裁判官の判断によらずに、短期の解決を目指します。このチャンスを逃すと、さらに労力や費用や時間がかかる場合があること、早期解決はお互いにメリットが大きいことを伝えて手続きに参加するようすすめます。また、個別労働紛争の当事者は、早期に、誠意をもって自主的な解決を図るように努めなければならないことになっています。

② 「団体交渉」

労働者の場合、労働組合の団体交渉に頼る方法が考えられます。

③ 「労働審判」

費用は裁判の約半額で、当事者の代理ができるのは原則弁護士だけです。期間は、申し立てから平均して2.5か月です。最終的に「審判」が下され、その後14日以内に異議申立てがなければ和解の成立となります。(異議申立てがあれば裁判になります。)お互いの証拠を出しあって事実を争うときに、裁判より短期の解決が期待できます。争点が十分少ないときに向いています。

④ 「裁判」

原則、弁護士にしか当事者の代理ができません。労働裁判の第1審の審理期間は平均15.9か月(令和2年)です。強制力のある「判決」が下されます。

※ 「仮処分」

裁判が長期化するときの回復できない被害を避けるため、3-4か月の審理で迅速(?)に仮の決定(従業員としての地位の保全・賃金の仮払いなど)を求めるものです。

11. あっせん・調停「手続の流れ」 (例)


相談者 相手方
初日 相談初日。
解決のために不足している資料を求められる。
2-3日後 解決方法として「あっせん・調停」をすすめられ、利用を決める。 【特定】社会保険労務士に「あっせん・調停」のサポートを依頼。
4-5日後 「あっせん・調停」を申請。 相談者の代理人(【特定】社労士)が初めて接触。「あっせん・調停」参加のメリットを説明、和解交渉開始。
7-10日後 「あっせん・調停」開始の通知が到着。
相手方が顧問社労士(または外部の【特定】社労士)に相談。
5週間後 「答弁書」の提出(締切日)。
6-7週間後 第1回「あっせん・調停」期日(申請から40日後)。
(労働局のあっせんの場合、この日に和解が成立するか、さもなくば原則として打ち切られます。それ以外の場合、必要に応じて第2回期日が設定される場合があります。)

申請は、賃金が時効にかかりつつある場合は急がなければなりませんが、一方で、一見ささいな出来事が意外に重要なこともあるので、なるべくくわしいお話が必要です。
 複雑な事件では、事件の経過についてメモなどがあれば手続きが早く進められる場合があります。

12. あっせん・調停「申請書(申立書)・答弁書の書き方」

「申請書」は、厚生労働省の記載例PDFや、「労働審判手続申立書」の記載例(東京地方裁判所のサイト)を参考に書きます。書き切れない場合は「別紙参照」などとして別紙に補足します。

「あっせん・調停を求める事項(申立ての趣旨)」は、相手に何を求めるか(請求内容)をかきます。

「あっせん・調停を求める理由(申立ての理由)」は、請求内容の「法的根拠」(相手の不法行為や債務不履行など)をかきます。

※ 参考図書『要件事実マニュアル』(ぎょうせい) 参考図書は専門家向けです。

「答弁書」の記載例はこちらPDFにあげておきました。「○○については認める(争う)。」「○○については認め(否認し)、その余は争う(認める)。」などと書いてもよいでしょう。意味が通れば表現は自由でかまいません。ただし、申請者が記載した項目名や項目番号を引用するときは間違えてはいけません。大切な部分に反論できていないことになる恐れがあります。

必要に応じて申請書・答弁書の内容を補完するため「陳述書」などをそえます。文章は、「あっせん・調停」委員にわかりやすい簡潔なものにしましょう。

ただし、「法的根拠」は大変重要です。なぜなら、「あっせん・調停」委員は「中立」で、どちらか一方の味方というわけではありません。そんな中立の委員が双方の言い分を公平に聞いて「あっせん・調停」をまとめようとすると、「法的根拠」の強い言い分を無視できないので、それを軸にまとめようとするしかなくなるのです。申請書・答弁書の作成は、法的根拠が事件によって異なるため、素人の方がそれを正確に記述するのはハードルが高いと思われます。できるだけ専門家───【特定】社会保険労務士か弁護士───に依頼するようにしましょう。専門家に依頼すると、和解できる率が倍ほどに増えるというデータもあります。法的根拠が強ければ、中立の委員が「法的には○○のようになりそうです。」などと、相手側に伝えてくれるでしょう。

未払賃金の額は、労働契約の内容をもとに計算します。

人身等の損害額は、裁判例が豊富な交通事故裁判の事例などをもとに計算します。

 ※ 参考図書『青本』 (財団法人 日弁連交通事故相談センター)

 ※ 参考図書『赤い本』(財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部)

慰謝料の額は、過去の裁判例などをもとに計算します。

 ※ 参考図書『慰謝料算定の理論』 (ぎょうせい)

13. あっせん・調停の「期日」にて

①自分の主張を確認されるので、話します。

②相手側の主張や委員の誤解などもありうるので、自分の主張が正しく理解されているかについても注意し、必要に応じて主張をおこないます。

③「あっせん・調停」委員の心証が固まってきたら、「あっせん・調停」案を求めたりしますが、委員が相手側を説得しやすいよう、裁判では負けた側の負担の方がより大きくなるなど、相手側が歩み寄りやすくするような理由も提示するようにします。

14. 和解の「交渉」

交渉は、 ①自分(自社)の主張と、その法的根拠、 ②相手側の主張と、その法的問題点、 ③和解交渉に参加するメリットと参加しない場合のデメリット、 ④解決できなかった場合の今後の見通し、などを交えておこないます。

あっせん・調停の申請書が受理されてからあっせん・調停の手続が終了するまでの間、【特定】社会保険労務士は、相手側とこれら和解の交渉をおこなうことができます。

15. 和解交渉のポイント

和解交渉の目的は、裁判とくらべて、①費用を節約する、②解決までの期間を短縮する、③労力を節約する、のおもに3つです。特に、裁判で負ける側にとって、裁判をさけるメリットは非常に大きいといえるでしょう。それは、相手の請求にくわえ、弁護士費用、交通費・日当、資料作成料、裁判費用、相手側の弁護士費用まで支払わされることになるからです。とはいえ、裁判の勝ち負けはやってみないと本当にはわかりません。

お互いの主張をくわしく検討すると、どちらに分がありそうか判断できそうなことがあります。

裁判にならないうちに結果を予想してその結果が思わしくないときは、時間と費用のかかる裁判を回避して、妥協してでも早期解決を図るのは、将来の出費や労力を節約できて好ましいことです。

「裁判は絶対にイヤ」という姿勢では、すべての主張が通らないでしょう。相手から「裁判で争う」と言われれば、無条件降伏しかなくなるからです。「裁判を避けたい」のは相手も同じです。そして費用を減らしたいのも、早い解決を望むのも同じです。したがって、相手を威圧・威嚇(いかく)しているなどと受け取られないように気をつけながら、たとえ本当にはそのつもりがなくとも、「裁判にするかもしれない」という姿勢は崩さないほうがよいものです。そして「あっせん・調停」で解決するためには、裁判の可能性を念頭に置きつつその結果を考えた場合に今どうするか、ということをお互いに真剣に考えることが大切です。

「あっせん・調停」委員は双方の主張から事実認定をおこない、認定された事実に法律の規定を適用して「あっせん・調停」をおこなおうとしますが、労働紛争ではお互いの説明が食い違い、特に「あっせん・調停」では証拠調べをしないので事実認定が困難になりがちです。事実認定について争わなければならないときはお互いの歩み寄りで「裁判」を回避することが望まれますが、一方で、事実認定について争いがないときは解決が容易になるでしょう。

相手側の主張が通りそうなときは、裁判になってもいいことはありませんので積極的に話し合いを求め、条件交渉に集中しましょう。

難しいのは、どちらの言い分が通りそうかはっきりしないときです。裁判でどうなるか予想できないので、裁判の長期化リスクを避けるためにも和解交渉はメリットがあります。しかし、どうなるかわからない段階で譲歩するのは勇気がいります。この場合、裁判の長期化リスクを避けるためには次の2つが考えられそうです。

①「あっせん・調停」でお互いに同等の譲歩をして和解する。

②弁護士に依頼して「労働審判」により、より強制的な解決を目指す。

①の場合、最も短期間に解決すると思われます。②の場合、費用・期間が増えますが、証拠調べをおこなうので 少しは納得性を高めることができると思われます。

16. 「守秘義務」

「あっせん・調停」委員がおこなうあっせん・調停の手続は非公開なので、その情報が委員会の外に漏れないようになっています。

社会保険労務士が、業務に関して知り得た依頼人の秘密情報については法律によって守秘義務が課せられ、本人が許可した場合や法律に基づいて証言する場合など正当な理由がない限り、他人に漏らしたり盗用することは禁じられています。

17. あっせん・調停が不調に終わった場合

あっせん・調停は打ち切られます。労働局のあっせん・調停では、打ち切りから30日以内に裁判を起こすと、同じ請求内容についての時効は、あっせん・調停の申請時点で中断されたとみなされます。

18. 「裁判費用」

不調に終わって裁判になった場合、裁判費用は、通常、敗訴率に比例して按分されます。全面敗訴すると、全額負担になるということです。

19. 「弁護士費用」

不法行為による損害賠償訴訟では、弁護士費用の一部(認容額の1割程度)が損害として認められます。

20. 「その他」

個別労働紛争に対して、誠意をもって解決に努力しなければ、不法行為に当たる可能性があります。

(1) 紛争当事者である労使においては、具体的には、まず早期に、誠意をもって話し合うことにより、互いの主張を確認し、問題点を整理すること、又は、紛争当事者が直接に話し合うことが困難な場合には、第三者を介して話合いをおこなうことなどにより、企業内での解決に努めることが求められることとなること。
(2) このような話合いを促進するためには、労働者から苦情が申し立てられた際に対応するのみならず、あらかじめ、企業内において、労働者からの苦情を受け付けてこれを処理するための仕組みを整備しておくことが望ましいこと。具体的には、苦情処理の仕組みを明確化して労働者に周知する、不満・苦情を受け付ける担当者・窓口を設ける、紛争処理機関を設置するといった様々な方法が考えられるが、いかなる方法をとるかは、各企業の労使に委ねられるものであること。
とされています。

また、事業主は、労働者があっせん・調停の申請をしたことを理由に解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。

21. 主な解決方法の比較(※1)


種類 助言・指導 あっせん 労働審判 裁判
担当部局 労働局 労働局 労働委員会 社労士会 裁判所 裁判所
窓口 総合労働
相談コーナー
総合労働
相談コーナー
総合労働
事務所など
労働紛争
解決センター
地方裁判所 地方・
簡易裁判所
相手方の同意 不要 不要(※2) 不要(※2) 不要(※2) 不要 不要
代理人(※3) 社労士
・弁護士
【特定】社労士
・弁護士
【特定】社労士
・弁護士
【特定】社労士
(※4)・弁護士
弁護士 弁護士
評議・審議 非公開 非公開 非公開 非公開 公開
期日 原則1回 原則1回 原則1回 3回以内
あっせん案・
調停案の強制力
なし なし なし なし
合意・確定審判の効力 「和解契約書」を
債務名義とする
「和解契約書」を
債務名義とする
「和解契約書」を
債務名義とする
裁判上の和解と同じ(債務名義)
手続費用 無料 無料 無料 原則有料 有料 有料
年間処理件数 約 8,000 約 3,400 約 200 約 200 約 3,600 約 3,000
1か月以内に処理(※5) 98.3% 41.7% 24.6% 2.0% 2.3%
2月以内
(※5)
1.4% 36.5% 39.6% 23.1% 2.9%
3月以内
(※5)
32.3% 2.8%
6月以内
(※5)
39.0% 9.9%
1年以内
(※5)
3.6% 24.1%
2年以内
(※5)
41.0%
3年以内
(※5)
13.3%
5年以内
(※5)
3.5%
備考 事実に争いがないときにはす早い解決が期待できる。 「あっせん」か、セクハラ等の一部は「調停」をおこなう。解雇無効から賃金・慰謝料請求まで広く扱う。現実的な解決方法を探れる。不調に終わって30日以内に訴訟へ移行したときは、時効の中断効あり。 「あっせん」をおこなう。労使の委員が話合いを促進。解雇無効から賃金・慰謝料請求まで広く扱う。現実的な解決方法を探れる。時効の中断効なし。 「あっせん」をおこなう。解雇無効から賃金・慰謝料請求まで広く扱う。現実的な解決方法を探れる。平日夜間や土曜日に行う場合あり。不調に終わって1か月以内に訴訟へ移行した場合、時効の中断効あり。 「審判」の前に「調停」を試みる。現実的な解決方法を探れる。裁判ほどではないが解決には少し時間がかかる。裁判上の和解と同一の効力。異議申立てによって訴訟へ移行。 時間と費用が最もかかるが、白黒はっきりつけられる。
  • これらの他にも、「少額訴訟・支払督促・民事調停」といった方法もあります。
  • 相手方の同意なしでもあっせん・調停は開始されますが、相手方に参加の意思がないと打ち切られます。
  • 代理人がいないと手続が開始できないわけではありません。
  • 社労士会でのあっせんに限っては、請求額が120万円を超えると弁護士との共同受任が必要です。解雇無効など金額の算定が困難なものは160万円の請求とみなします。
  • 処理が終了したものの内、手続の開始から終了までの期間を表します。全てが解決するわけではありません。なお、労働局のデータには、「雇用環境・均等部(室)」での男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、パートタイム・有期雇用労働法及び育児・介護休業法に関する「紛争解決援助・調停」のデータは含まれていません。
  • 「助言・指導」「あっせん(労働局)」のデータは令和4年度、「あっせん(労働委員会)」のデータは令和3年度、「社労士会あっせん」のデータは平成26年度、「労働審判」のデータは令和3年(暦年)、裁判のデータは令和2年のものを使用しています。

特定社会保険労務士は、あっせん・調停の手続きの代理をしています